
母の短所
うちの実家は、正直きたない。
昔からそうだった。
ダイニングテーブルの上は物で溢れていて、いつもリビングの低いテーブルでご飯を食べていた。
ダイニングで食事をした記憶がない。
新聞紙やチラシ、食べ物、塩こしょう類、
そういったものでイッパイ。
片付いてないのがデフォルト。
だから、物心ついてくると、恥ずかしくなってきた。
人を家には呼べない。
彼氏ができても、家を知られたくない。
結婚するときも、実家に招くのがいやだった。
でも、そこは乗り越えないといけなかった。
「ちゃんと片付けといて」
と母に伝えておいても、
それなりに汚かった。
母は片付けるのが苦手な人。
掃除もマメにやらない。
でも、愛情豊かでいつも子どもたちに優しくて、細かい事を言わない大らかな人。
作ってくれるご飯も、いつも美味しい。
一長一短だね。
完璧な人はいないし、
自分だって完璧じゃないもんね。
でも、親が年老いて、私の子育ても少し落ち着いて、いまだに実家の汚さと、過ごしにくさが少し気になってきた。
母はもう視力も弱っているし、体力もない。
だから、代わりに私が整理整頓しよう、と思い立ち、実家大片付けを始めた。
何年も使っていない物は手放す。
使わないものを溜め込んで、狭い空間で暮らすなんてバカバカしいって事を伝えて、納得してもらい、ジャンジャン処分していった。
母が一日中過ごしているキッチン&ダイニングを勝手に模様替えした。
レイアウトを変えるだけで、歩きやすくなり、すごく広くなった。
母は大喜び。
窓の半分を塞いでいた食器棚も動かしたから、日光が入ってすごく明るくなった。
「こんなに明るくてこんなに広かったんや・・」って、本当に喜んでくれた。
それから、自分でも整理整頓するようになった。
いらないものを捨てる、ということに抵抗がなくなったみたい。
前は「いつか使うかも」って残しておいた物たち。
必要なかった、と気づくのに軽く30年は経ってるね。
物が減ることがこんなに気持ちが良いものだったと知ったタイミングは、母が80歳を迎えていた。
もっと早くやってれば良かった、って思う。
娘として、少しは親孝行になったのかな。
離婚したり再婚したり、心配ばっかりかけてきたし、自分の人生で忙しかった私。
やっと親孝行できるようになってきた。
「快適に過ごしてるよ〜」
って何度も何度も感謝の言葉を伝えてくれる。
母自身も、3人の子どもの育児と、単身赴任で不在の夫、外での仕事。
母は片付ける暇もないくらい忙しかったんだ。
忙しい毎日の中で、いつも穏やかで優しくて、大らかに生きてきた母は、
家事まで完璧にこなそうとしたらパンクしてしまってたのかもしれない。
これは私の勝手な妄想だけど。
ありのままを「これがベストなんだろう」ってただ受け入れるのって、難しいんだけど、
そうすることができたら心穏やかになれるね。
不満顔で批判ばかりしてるのはアカンよね。
私も少しは大人になったな。

